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今は、育児休業法ができたり、子ども連れのお母さんに社会全体の仕組みとしてはやさしくなりましたけれど、私が長男を出産した17年前は、おむつ使用の赤ちゃんは市民プールには入れない、0歳の託児所が付いているイベントはまずないという状況でした。
私個人の生活では、フリーアナウンサーの仕事は続けていて、生後3ケ月くらいから仕事に復帰しました。仕事に対してはすごくストイックで、100%の準備では気が済まない、120%、150%の準備をして臨んでいましたが、赤ちゃんがいるとその時間が十分にとれません。ベビーシッターに来てもらっていましたが、出掛ける前にすごく泣いて…。乗ろうと思った電車に乗れなかったり。そういうことが続き、フリーで仕事をすることの限界を感じました。
また。一方で、子どもにとって初めての集団コミュニティというのは母親と一緒に行く公園ですよね。その公園で、お母さんたちの間でいじめや仲間はずれがあるんです。そんなのを見ているから、子どもたちの世界でも幼稚園からいじめがあって、自分が気に入らないやつがきたら仲間外れにすればいい…と教わらなくてもやっちゃう。ここの根を切らないといじめとかは無くならないと思って、お母さんが自分に自信を持てることを提案したいと思いました。
そんな中で、ベビースイミングで知り合ったママ友に電話をして開口一番に「何かしよう」って言ったんです。
どうしてお母さんになったことで誰も私たちのことを聞いてくれない、社会が必要としてくれてない。お母さんにもできることあるよね…、お母さんにしかできない、分からないものを外に発信していこうよ…という思いで、育児サークル「PAO」を立ち上げました。そこで企画したのが「ハンディキャップがあるお子さんもないお子さんもみんな1日楽しく交流しましょう」という親子で楽しめるイベントです。東京・多摩ニュータウンで行ったのですが、大変な反響で、千葉県など隣県からも3〜4時間かけて電車乗りついで参加してくれて、関東圏内から500人のお母さんたちが集まってくれました。イベントは手話のコンサート、点字のコーナー、絵本の読みきかせなどを行い、大成功でした。
このイベントが話題になり「あなたと同じことを考えている人がいるよ」と紹介され、お母さんのネットワークを持っている2人の方と出会うことができました。その中の一人がキャリア・マムのという名前を考えてきてくれて、今の社名になっています。
多摩ニュータウンのイベントをきっかけに、集まってくれた1500人のお母さんたち。自分らしく輝いて生きられると言っておきながら「何だ堤さん、やっぱりうそじゃん、お母さんとしてしか生きられないじゃない」と言ってまた元の生活に戻っていくのを見るのは耐えられませんでした。みんなに無謀だと言われ、大海に塩を投げているようなもんだなとも思いましたが、一人くらいそういうえたいのしれない大きなものに立ち向かうものがいてもいいのかなと思い、キャリア・マムを立ち上げました。
会う人ごとに「1500人のママのネットワークがありますが、何かできませんか」と尋ねました。その時に広告代理店の知人から「マーケティングやったらいいんじゃない」と教えていただきました。
もともと、長男が生まれてからいろいろと感じていたことがあり、生活者、特にお母さんたちの声が企業側に届いてないのではないかと思っていました。「商品の陳列棚がもう少し低い方が良いとか、1パックはもう少し小さいサイズが良いとか、根本的に商品を変えてほしいということでなく、もう少し、売り手側ではなく買い手側に寄った形で商品やサービスが提供されたら良いのにな…」と言葉にできる場が無いけど心の中で思っているんだよ、ということを伝えたい思いがありました。
マーケティングの「マ」も知らなかったので、簡単なアンケート調査からはじめ、そのうちレポートを書いてみたりして積み上げていきました。そのレポートが「どうせ主婦が書いたものだからたいしたものではないだろう…と思って発注したら、非常にユーザーの視点に富んだ、普通の調査会社からは上がってこないような視点がいっぱい溢れたレポートが返ってきた」という評価をいただき、いろんなお仕事をいただくようになりました。

自分で判断して行動した結果がそのなにがしかの金銭的な対価となって返ってきたら、やりがいもある、だからそれを仕事という形にしたのがキャリア・マムです。現在、主として行っている事業は調査、商品開発などのマーケティング、企業の正社員を使い固定給を払うより、在宅の主婦を活用し、よりフレキシブルに能力を発揮してもらうアウトソーシング、この2つをビジネスの柱としてやっています。
現在、何かしら社会に出て活動したいと思っているキャリア・マムの登録会員さまが10万人いらっしゃいますが、思いがあっても自分のスキルがそこまでいかないと仕事ができません。そこで最近始めたことは、ビルトアップして仕事ができるようになる学びの場創りと、お金はもらえないけれど家族以外に「ありがとう」と言ってもらえるボランティアの機会に対して積極的にチャレンジしていく土壌を創ることです。
キャリア・マムの会員さまには、失敗も含めて行動の責任が受け入れられるような、凛としたお母さんになってほしいと思います。彼女たちをいちばん身近で見ている子どもたちが、自分が頑張れることしか頑張らない、うまくいきそうなことしかやらず、失敗しそうなことにはチャレンジしない、面倒なことは他人のせいにする、うまく出来まかったことは他人のせい、社会のせいにする…というような人にはなってほしくないから。それは消費生活にも繋がり、自分の力で、良いものを取捨選択できるようなユーザーになれると思います。
いろんなことにチャレンジしたり、自分がこうあったらいいなという願い、思いを言葉で外に発信し続けたりする人が1人でも増えると、元気な社会になるだろうな〜という思いがあり、それを支えるための仕組みがキャリア・マムです。

在宅だと子育てとかハンディキャップがあっても仕事ができますが、残念ながら、介護を抱えるスタッフが離職するケースが見られるようになりました。特に認知症で徘徊など動き回るタイプの認知症を介護するときに、昼夜逆転して、仕事したいと思っていたスタッフが5人以上離れていきました。介護期にはいったときにも何とか外の力も使って仕事を続けてほしい、それを教えてあげられることを仕事にしたいと思っています。どういうことを選べばいいのか、情報を伝えるコンシェルジェみたいなスタッフを創るというのが今の一つの目的です。私たちが情報に強い、取捨選択の仕方を知っている、なおかつ、家にいて子育てや介護をやってきているという中で、この3つをつなぎ合わせたときに、活躍できる新しいフィールドがあるなと思っています。
介護や子育てで外に出て行けないつらい時期があったからこそ、その痛みが分かる、それを忘れないでいることがいろんな価値観を見出せると思います。生活全般のクオリティを情報面からアップさせるような、おせっかいおばちゃんの集団でありたい、新タイプの地区の民生委員というところでしょうか。「面白い」「楽しい」「わくわくする」…面白い楽しいが生きていて良かったという原動力になる人材を創りたいですね。「能力のある人を在宅のしくみを創り活用する」「その人の能力に合わせた新しい仕事やボランティア事業を創る」「人を創り活用するキャリア教育事業で地域を支える人を創る」という、この3つのことができるのがキャリア・マム。これからもキャリア・マムでしかできないことをずっとやっていきたいと思います。
